2000年代に入り関節リウマチの治療は革命的変化を迎えました。日本では2003年に生物学的製剤であるインフリキシマブ(レミケード®)がはじめて発売され、これまでにエタネルセプト(エンブレル®)、ヒュミラ(アダリムマブ®)、トシリズマブ(アクテムラ®)、アバタセプト(オレンシア®)、シンポニー(ゴリムマブ®)、セルトリズマブペゴル(シムジア®)の7製剤が販売されています。
今後も、新たな生物製剤が発売予定であり、これらの薬剤によって関節リウマチの治療は、病気の進行を極めて抑制できる状態が可能であり、現時点では病気の完治は難しいものの、将来的に夢ではない時代となりつつあります。
現在日本では7つの生物学的製剤が発売され、各薬剤の種類を下記に示します。
抑制するサイトカイン、注射方法、注射間隔で分類され、ご自分のライフスタイルにあわせて生物学的製剤を選択していただくことが多いのですが、患者様の状況により、使用できない生物学的製剤もありますので相談して決めています。治療開始を大学病院等で希望され、安定期を当院で治療を望まれる方もお気軽にご相談ください。現在、当院では発売されている全ての抗リウマチ薬、生物学的製剤の投与が可能です。
最近は内服タイプの標的分子型 抗リウマチ薬、JAC阻害薬トファシチニブ(ゼルヤンツ®)が発売されました。
生物製剤のメリット・目的
生物学的製剤の治療の目的は大きく分けて3つあります。関節の痛みや腫れが無い状態を維持すること(臨床的寛解)、関節の破壊をおさえること(構造的寛解)、日常生活を支障なく行うことができる(機能的寛解)を維持することが最大の目的です。
すなわち、関節の痛みが無く、生活できて、さらに病気が進行しない状態を維持することが目的です。
最新の論文では生物学的製剤による厳格な治療によって治療を受けた30-40%の患者が寛解に達する報告があります。
生物製剤の問題点
人間の体には通常、細菌やウイルスから守る免疫細胞(白血球、リンパ球、マクロファージ)が存在します。それらの細胞を活性化させる物質をサイトカインといいます。
関節リウマチではIL-1.IL-6.TNF-αと呼ばれる炎症性サイトカイン過剰に産生されており、活性化された免疫細胞によって関節が破壊されている状態にあります。
治療の基本は過剰なサイトカイン産生を抑制し免疫系細胞の働きをおさえることですが、言いかえれば免疫反応を抑えることから、肺炎、尿路感染症、結核といった感染症の危険性が増加します。
また、悪性腫瘍、神経疾患の悪化、自己免疫疾患の誘発、細菌ではB型肝炎の再活性化といった問題が報告されています。
もう一つの問題は治療費です。薬の値段が高く、治療費が3割自己負担で年間約45-55万、収入に応じて高額医療制度が適用となります。
基礎疾患として呼吸器疾患、糖尿病等の基礎疾患を有している患者、65歳以上の高齢者ステロイド内服中の患者では感染症のリスクが高くなる報告があります。
当院では全ての生物製剤による抗サイトカイン療法による治療が可能ですが、これらの治療を受けるためには悪性腫瘍や感染症の合併の有無を確認するための検査が必要であり、当日来院されて即治療を受けられるわけではありません。
また、万が一合併症が生じた場合、入院が必要になることもあり病診連携が必要になる場合があります。
様々なケースを想定し、個々の患者様にとって『より確実に、より安全に』な治療の提供を目指しています。
詳細はお気軽に当院まで、ご相談ください。
生物学的製剤による抗サイトカイン療法治療の受けられない方
- 活動性結核の方
- B型肝炎ウイルス感染者の方
- 6ヶ月以内の重篤な感染症既往歴のある方
- 悪性腫瘍の方
最後に
当院では『より安全に、より確実に』を治療目標としております。当院で生物学的製剤治療中の患者様で症状に変化があった場合は、随時ご連絡をいただけるようホットラインを設け、開院以来、関節リウマチの専門治療に取り組んでまいりました。
今後も、栃木県北部を中心とした関節リウマチ・膠原病の専門医療機関として社会に貢献できればと考えています。