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トピックス

 

関節リウマチにおける関節超音波検査について

早期に関節リウマチと診断し治療開始することが、将来的に関節変形を予防する上で非常に重要です。

早期の関節リウマチでは滑膜病変の評価が重要であり、その診断ツールとして関節超音波検査が注目され、20145月に「リウマチ診療のための関節エコー評価ガイドライン」が日本リウマチ学会から発刊されました。

 

現在、関節リウマチを診療する専門医の間では徐々に広まり、当院でも平成284月より本格的に導入しております。

 (関節超音波検査)

 



関節超音波検査の優れている点
 

   ①臨床診断の補助
   
   ②関節炎の炎症評価、X線で認めない関節損傷評価、治療効果判定

 
 初診時に関節炎所見がはっきりせず、血液検査においてもリウマトイド因子陰性といったケースでは、関節リウマチなのか、他の疾患による関節痛なのか、診断が難しいことがありますが、関節超音波検査は病気の鑑別診断の診断補助ツールとして非常に有用です。
 
また、関節超音波検査は一般的なグレースケール(GS)は滑膜腫脹が観察し、パワードップラー(PD)で示される血流シグナルは滑膜炎を示すとされており、関節リウマチの病気の勢い(疾患活動性)を反映しているとの報告があります。
 
関節エコーによる関節リウマチの滑膜所見はスコアで分類されており。下記に示すようにグレード0~3に分類されます。

(関節エコー撮像法ガイドラインより抜粋)

 
 
 グレードが上がるほど、滑膜炎所見が強い、すなわち疾患活動性が高いこと(病気の勢いが強いこと)を意味します。
また治療等により関節リウマチの疾患活動性が低下すると、血流シグナル低下することから治療効果判定にも広く用いられるようになりました。
 
 
超音波検査は痛み等もなく、リスクのない検査法で、検査時間は15~30分です。
検査希望の方は外来診療時にご相談いただければ、予約制で検査を実施しております。


 


 


 妊娠、出産、授乳中の関節リウマチの治療について
 

若年者の関節リウマチ治療は、将来のライフイベントを考慮すると厳密な関節リウマチ管理が必要と思われます。
その理由として

①余命が長い

②就学、就職、結婚、出産、子育て等が控えている点です。

 余命が長いということは、関節リウマチがうまく管理できなかった場合、関節変形が比較的若い時代に生じ、日常生活に支障を来たすこととなり、しいては入院生活が避けられない事態に陥ることも考えられます。また、若年者では就学、就職、結婚、出産、子育と人生で重要なライフイベントが控えていますので、厳密な治療によって、
健常者と同じように、充実した人生を送れるように関節リウマチを管理することがリウマチ専門医の使命だと考えています。
しかしながら、若年者の場合、子供の教育費等により経済的に厳しい方も多く、治療の選択肢を制限されるケースも少なくありません。
関節リウマチは慢性疾患ですので治療の継続することが重要であり、個々の患者さんに応じた関節破壊を可能な限り遅らせる治療をご提案させていただきます。
不安をお持ちの方は遠慮なくご相談ください。
 
妊娠前、妊娠中および授乳中の関節リウマチの治療について
 
妊娠をお考えの方は妊娠前にご相談ください。
関節リウマチ患者の妊娠、出産には家族計画が必要です。関節リウマチの治療薬の中には妊娠前、妊娠中使用できない薬剤があります。また、体が妊娠継続、出産が可能か否か、内科医、リウマチ専門医、産婦人科医による判断を要します。

 薬剤の使用にあたり、添付文書の記載内容は公的な評価基準であり、もっとも重視されるべきものです。「妊婦、産婦、授乳婦への投与」の項を中心に関連情報が記載され、妊娠中に使ってはいけない薬は冒頭の「禁忌」の項にその旨が併記されます。さらに、いくつかの危険度の高い薬は、「重要な基本的注意」、あるいは「警告」欄で注意喚起されることもあります。
 
 「妊婦、産婦、授乳婦への投与」の項の記載例として、「~投与しないこと」、「~投与しないことが望ましい」、「~治療上の有益性が危険を上回ると判断される場合にのみ投与すること」といった表現がよく使われます。
胎児毒性、催奇形性等が証明されていたりするものは「~投与しないこと」、「投与しないことが望ましい」と記載されており使用禁忌にあたりますので、基本的に妊娠中に使用されることはありません。
しかし、大部分の薬剤は「~治療上の有益性が危険を上回ると判断される場合にのみ投与すること」は、妊娠中でもまあまあ安全なほうと考えてもよいと思います。
ただし、薬そのものの危険度のほか治療上の有益性が考慮されている点に留意する必要があります。
この「有益性」の解釈ですが、現場で説明していると、医師と患者の視点でズレが生じているケースをしばしば経験します。
有益性と危険性の両面を説明することが医師として重要と思われます。
実際には「妊娠と気づかずに薬を内服してしまっていた」、「持病があり妊娠していても休薬が困難であった」といった事は、
これまでの医療現場では多々あり、これらの症例を追跡調査している研究機関がありますので、妊娠と薬についての詳細な
相談を希望される患者さんは下記をご参照ください。
 
厚生労働省事業 妊娠と薬情報センター
成育医療研究センターホームページ http://www.ncchd.go.jp/ をご参照ください。
 

当院では成育医療センターへの紹介も行っております。

 

妊娠、出産、授乳中の関節リウマチの治療ポイント
 
妊娠前
●妊娠の希望を早めに医師にご相談。
●NSAIDs(消炎鎮痛剤):排卵期は中止、妊娠初期(最初の3か月)なるべく控える。
●ステロイドは必要な場合は必要最小量。
●抗TNF製剤は中止できないなら妊娠3カ月まで続行。
●アバタセプト、トシリズマブの安全性についてはまだ十分な情報が集まっていません。
 
妊娠中
●NSAIDs(消炎鎮痛剤):妊娠30週までは内服可能。それ以降はプレドニンゾロン(10mg/日以下)
  で投与。
●サラゾスルファピリジンは妊娠中も継続可能。
●抗TNF製剤は使用可能だが、セルトリズマブ以外は妊娠後期に中止。
●抗TNF製剤を使用した妊婦から生まれた新生児は生後6カ月間、生ワクチン投与しない。
 
授乳中
●NSAIDs:アスピリン以外のNSAIDsは内服可能。
●サラゾスルファピリジンは授乳中も可能。
●少量のプレドニゾロンは内服可能。20mg/日以上内服している場合は内服後4時間以降に授乳する。
●抗TNF製剤は続行可能。
 
 
参考までに文献上報告されている薬剤について下記に示します。
 

妊娠前に中止するべき薬剤(胎児毒性が存在するため)     推奨B
メソトレキサート、シクロフォスファミド、ミコフェーノール酸モフェチル
 

妊娠中使用できる薬剤                          推奨B
サラゾスルファピリジン、アザチオプリン、シクロスポリン、
タクロリムス、コルヒチン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン
 
プレドニゾロンは妊娠中も継続可能。                  推奨B
 
消炎鎮痛剤(NSAIDs)は妊娠初期および中期のみに制限    推奨B
 

妊娠中の生物学的製剤の使用について
 
抗TNF製剤は妊娠初期での継続を考慮すべきである。
エタネルセプト、セルトリズマブは胎盤通貨性が少ないため、
妊娠中を通しての使用を考慮すべきである。             推奨B
 
リツキシマブ、アナキンラ、トシリズマブ、アバタセプト、
ベリムマブおよびウステキヌマブは妊娠中の安全性データーが
限られているため、受胎する前に他の治療に返すべきである。
これらの治療を妊娠中も継続するのは他の妊娠中に使用可能な
治療薬が母体の疾患活動性を有効にコントロールできない場合
に限るべきである。                             推奨D
 


関節リウマチ診療で思う事
 


 2000年にアメリカで生物学的製剤のエタネルセプト(エンブレル)が初めて関節リウマチの治療に用いられて以来、関節リウマチの治療は革命的変化が起こり、長年リウマチを診療してまいりましたが、外来での患者さんの印象も大きく変わったように思います。
以前は、外来の通院のほとんどの患者さんが、外来の度に「痛い」といっていましたが、今は「痛い」と訴える方が少なくなりました。
まさしく医学の進歩を診察室で実感できる時代となったことは喜ばしいことです。


 

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